【医療費は無料が、福祉なのか】 朝日新聞 2008.11.21
東京の日の出町が、後期高齢者、つまり75歳以上の医療費を全額無料にする予定だそうです。
と言っても、対象者は1800人。 人口が1万6000人の町です。 (75歳以上が11.2%。 全国平均が10%なので、ちょい高いです) 予算は8500万(ひとり47000円)だそうで、全国平均がひとり90000円弱ですから、元気なお年寄りが多いのでしょうか。
これには、もちろん裏があって、この小さな町にイオンショッピングセンターができて、固定資産税がどーんと落ちるようになったからです。 イオンモールの資料を見ると、投資額160億円なので、普通に計算すると、約2億円の固定資産税が落ちるようになりました。 (その分、交付税が若干カットされますが)
この増分を、そのまま予算にあてた感じです。
投票率の高い高齢者向けの、究極の選挙対策なのか、高齢者福祉の大胆な取り組みなのか、評価が難しいところです。 (ここの町長は、4期つとめて、すでに77歳。 次の選挙はもう出ない?から、選挙対策ではないのかな?)
後期高齢者医療制度で苦しんでいる高齢者をサポートするという趣旨のようですが、個人的には「完全なバラマキ行政」です。
高齢者は所得も低く、資産も少ない高齢者もいれば、所得(年金)が多い高齢者もいれば、資産の多い高齢者もいる。 高齢者が全員、弱者であるというのは、大きな間違え。
確かに、体が弱って、医療費がかかるし、介護費用もかかる。(75歳以上の元気な高齢者は、50%以下) 所得は年金だけだから、収支的には厳しいのは事実。 厳しいから、行政が負担しますといったら、子育てやっている若い夫婦も結構厳しいと思う。 「生活の厳しさアピール」の世界です。
若い夫婦は選挙に行かないけれど、高齢者は選挙に行くから、高齢者向けのサポートは充実ということでしょうか。 それとも、医療は別格ということでしょうか。
日本の皆保険制度は素晴らしい。 全員が大きな病気にかかるリスクがあるので、その負担の上限を決めて、「大病の場合、お金がないから、病院に行けない」ということがない。 病気によって、社会的に没落していくというリスクを、社会でヘッジするという、保険制度は絶対に死守すべきでしょう。
でも、医療費のタダは必要か?
子供の医療費無料も含めて、必要ないことだと思います。 ある程度の負担は必要だし、無料は必要以上に医療機関に行くようになり、無駄な医療が発生しやすい。 夜間も含めた「コンビニ受診」、つまり「タダなら、取り合えず、診療してもらおう」とうい行動を誘発しやすい。 夜間なんか、少ない医者が、軽症者の診療で、仮眠もとれなくなる。
医療にはお金がかかるという前提を崩してはいけないと思う。 ただし、医療費貧乏にならないよう、上限を作って、それ以上はかからないようにするという、シーリング制は必要だと思う。 子供がいる世帯は、そのシーリングを下げれば良い。
確かに、手続き的には面倒だと思う。 自己申請が必要であるし。 でも、保険で守ってもらうための、必要な面倒ではないでしょうか?
社会の役割は、「病気になって、そのまま経済的破綻する」というリスクをヘッジしてあげることです。そのための、保険制度です。 「無料で、どのような医療も面倒見ますよ」というのは、ヒトの弱さにつけこんだ、目先の誘惑だと思う。
日の出町よ、その8500万円で、障害者、生活保護、子供の教育において、やるべきことがたくさんあるんじゃないでしょうか?
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