増税を訴えるには、政治家に対する、「市民の信用」が必要
【社会と家族が一緒で支える介護】 NHK 福祉ネットワーク 2009年6月10日
教育テレビの平日午後8時からやっている「福祉ネットワーク」という30分番組は、地味ながら、社会的弱者にスポットをあてる、NHKらしい良質の番組です。
6月10日、11日と二日にわたって、介護保険制度10年の総括番組をやっています。 初日は、
・「誰にでもサービスを受けられる」はずが、東京ではサービス(例えばデイやショートステイ)が足りずに、受けられずに、介護者の苦労があまり軽減されていないという事実と、
(儲からないから、事業者が介護サービスに参入しない。 しかも、今までの2回の報酬改定は、2回ともマイナス。 普通は参入しようという動機さえない)
・介護度が重い状態で、在宅の介護サービスを受けると、介護保険限度額を大きく越え、とてつもない自己負担が発生するという事実
を指摘しています。
要は、家族ではなく、社会で介護するという考え方で介護保険がスタートしたのに、社会で見切れていない介護がまだまだたくさんあるぞ!という指摘です。
ゲストには、厚生省の介護保険設計のメンバーのひとりである、堤修三教授が出ていたのですが、彼のは、このNHKの指摘に、
・もともと、社会がすべて制度として面倒みるというわけではなく、家族と一緒に介護をしていくということで、介護保険自体に大きな期待をしないでもらいたい
と、なんともストレートな発言が出てきました。 (ちなみに、堤教授は、10年くらい前の社保庁の長官。これだけ年金業務のいい加減さが指摘されているのに、よくも番組出てこられたなぁ)
「まだまだ完璧でないので、これからもっと充実が必要ですね」という、建前発言をしないで、制度設計側の本音が出た感じです。
設計者から見れば、「すべて「社会が見る」というのは、現状の保険料では無理。
理念上、社会で介護するといったが、実務的には、家族と制度で支えるというのは、全然おかしくないでしょう」という気持ちだと思います。
しかし、ゲストのもう一人である、訪問介護事業者のリーダーは、
・その介護をしてくれる家族がいない世帯が、どんどん増えており、家族と制度で言うけれど、その家族自体がない場合は、どうすれば良いのか。
そういった家族形態の変化も踏まえて、介護を社会で、ということではないのか?
と、まさに論理的に切り返していて、議論の軍配は、NPOリーダーに上がった感じです。
厚生省の元役人は、たぶん自覚的に、中途半端な状態で、介護保険をスタートさせたと思います。
・介護を社会で全面的に引き受けたら、絶対に今の財源では成立しない
・一方で、財源確保の増税も絶対に無理
・介護を社会で一部引き受け、一部は家族で踏ん張ってもらうという、微妙なところで介護保険をスタートせざるを得ない
・それでも、ないよりは絶対にまし。 時間が経ってから、修正をかければ良い
たぶん、こんな感じでしょうか? スタートの時点では、悪くない段階論だと思います。
しかし、その後の軌道修正を誰も引き継がずに、単純に「お金がない」という議論に終始してしまいました。
そこに、日本の政治家、官僚のいい加減さが見えてきます。
介護、医療は、社会で全面的に受け入れざるをえません。 そのためには、財源の確保、つまり増税は必須です。
「必要な行政サービスだから増税をする」と政治的な提案をしても受け入れられる、まともで誠実な政治家がいないことが、日本の悲劇です。
現状では、「お前の言うことは信用できない」ということになってしまいます。
しがらみのない、貧乏で、若い政治家が主流派になるしかありません。
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