医療の質を上げるには、第三者の評価
【病院の評価】 クローズアップ現代 2009年3月2日
診断群分類包括評価(DPC)による、診療報酬制度が導入された結果、副産物として、病院ごとの診療内容が明らかになるようになりました。
DPCとは、患者の病気によって診療報酬(医療費)が定額で確定する制度で、今までは、同じ病気でも、診療した内容にあわせて報酬が決まるという、出来高制度でした。 出来高の場合、どうしても非効率な診療が温存されるということでDPCが導入されています。 DPCを採用する場合は、診療内容を細かに報告する義務があるので、結果的に、病院単位で、病気の治療内容・入院日数が明らかになるようになりました。
DPCを採用する病院はどんどん増え(報酬上のメリットが加算されており、採用するインセンティブがきいている)、病院の診療データもどんどん増え(現在、1000病院以上、大きい病院はほぼDPC)、そのデータによって、病院の比較が可能になりました。
番組は、長野のある病院の事例を取り上げています。 消火器内科が担当している「胆のう炎」の入院平均日数が14日で、病院平均の10日を大きく上回っていることが判明。 近隣の病院は、なんと7日。 この違いの分析をしてみると、担当医によってそもそも日数がマチマチであることが判明、注射量や投薬量もバラバラであることも明らかになりました。 また、対象病院は内科アプローチ(薬中心)でしたが、近隣病院は、腹腔鏡手術対応で、結果的に入院日数が少ないことがわかりました。
結果的に、対象病院は、内科と外科が協力して、胆のう炎に対応していくことになったという紹介です。
また、このデータは一般にも公開されており、それを分析した、いわゆる「病院評価本」が販売されています。 このデータは、病院の一側面に過ぎませんが、患者にとっての病院選択、医療側にとっての、質向上努力にとって、大切なものになっているという形でまとめています。
医療の問題は、医療費というマクロ問題、医師・看護師不足など、多岐にわたるのですが、医療の質や効率という面も、実は大きな問題のひとつです。
診療報酬制度によって、質はまったく考慮されずに、診療報酬が支払われるので、医療側の質改善のインセンティブ、あるいはプレッシャーは一般的に弱く、質や効率の向上努力は、「医療側の自覚」に依存するという構造になっています。
したがって、自覚の高い医師は向上するのですが、低い医師は殿様商売、裸の王様状態で、診療の質が向上しません。
また、医療側と患者側の情報非対称性も、医療側の質改善努力が行われにくい原因です。 ほとんどの患者は、医師の診療や手術の良い悪いを判断できません。 サービスを受ける側が評価できないので、サービスする側は、ついつい傲慢になりがちという構造です。
この医療の質の問題を解決するのは、やはり徹底的な情報公開と、複数による、わかりやすい情報分析です。 人間は弱いもので、プレッシャーがなければ、どうしても易きに流れます。 それは、医師も政治家もサッカー選手もそうです。 基本的には、ストイックな自覚で易きに流れないようにするのですが、それでも、多くは程度はあれ、易きに流れます。
したがって、第三者、顧客、外部からの評価によって、自分の行為が律される必要があるのです。
医療のような専門性の高い分野の評価は本当に難しいのですが、それに取り組まなければ、医療の質は全体として上がりません。 詳細な診療内容データの網羅的な取得、その公開、様々な専門家・組織による自由な分析、これらが絶対に必要です。
このためには、もちろん、膨大なコストがかかるでしょう。 おそらく毎年数百億単位です。 しかし、年間30兆円以上、将来的には40兆円といわれる医療費の質があがる、あるいは効率が5%あがるだけで、十分ペイする内容です。
どう網羅的にデータを取得するのか、どうデータベースを組むのかなど、具体的には悩ましい内容が山積みですが、是非とも、現在の取り組みは、内容を拡大して、取り組むべきものです。
自分たちの医療行為が明らかになるのを直感的に恐れる医療側が、事務負担が多いという理由で、網羅的な情報提供を拒み、それを厚生労働省が認めるという流れがあります。 ここは、政治家の踏ん張りどころです。 医療系の民主党議員は、頑張ってもらいたいです。 民主党の厚生労働関連議員は、エースが揃っています。 藤村修さん、 山井和則さん、 中村哲治さん、頑張ってください。
また、この医療の質の問題は、本質的に、教育や行政サービスにもあてはまります。 この質改善のための仕組みづくりが、まさに社会設計、政治家の仕事です。
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